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コンピュータだからデジタルとは限らない

コンピュータにはアナログコンピュータと呼ばれるものがあります。
これは、連続的に変化する物理量(電圧、電流、機械的な動きなど)を使って計算を行うコンピュータです。デジタルコンピュータが0と1の不連続な数値で計算するのに対し、アナログコンピュータは量の「アナログ」表現を用いるのが特徴です。

現代ではデジタルコンピュータが主流ですが、特定分野では今でもアナログ的な要素が活用されたり、過去には様々なタイプのアナログコンピュータが活躍していました。

いくつか具体例を挙げます。

歴史的なアナログコンピュータ

* アンティキティラ島の機械 (Antikythera Mechanism): 紀元前150年~100年頃に作られたとされる、世界最古のアナログコンピュータとも言われる天文計算機です。惑星の動きや日食などを予測するために使われました。
* 計算尺 (Slide Rule): 17世紀初頭に発明され、電卓が登場するまで、科学技術分野で広く使われた機械式のアナログ計算機です。棒をスライドさせることで、乗算、除算、対数計算などを行いました。
* 微分解析機 (Differential Analyzer): 1930年代に開発された大規模な機械式アナログコンピュータで、微分方程式の解を求めるために使用されました。
* タイドプレディクター (Tide Predictor): 潮の満ち引きを予測するために作られた機械式のアナログコンピュータです。
* 水積分器 (Water Integrator): 水位の変化を利用して積分計算を行うアナログコンピュータ。ソビエト連邦では、大規模な水文モデリングなどに使われました。
* 射撃管制装置 (Gun Data Computer / Fire Control Computer): 第二次世界大戦中に広く使われたアナログコンピュータで、艦船や航空機からの砲撃の命中精度を高めるために、目標の動きや風向きなどを考慮して弾道計算を行いました。
* MONIAC (Monetary National Income Analogue Computer): 経済モデルをシミュレートするために、水流とパイプを使って作られたユニークなアナログコンピュータです。

現代でも見られる(またはアナログ的な要素を含む)もの

* 電子式アナログコンピュータ: 電圧や電流の変化を演算増幅器(オペアンプ)などで操作し、計算を行うものです。シミュレーションや自動制御などに使われました。近年では、教育用や趣味用の小型アナログコンピュータも登場しています。
* スピーダメーター(自動車の速度計): 車輪の回転速度を機械的または電気的に測定し、連続的な指針の動きで速度を表示するアナログ的な装置です。
* アナログ時計: クォーツ時計の振動や歯車の動きを利用して、連続的に時間を表示するアナログ的な装置です。
* アナログオシロスコープ: 電圧などの波形を連続的に表示する計測器です。
* アナログシンセサイザー: 電圧で音のパラメータを制御し、連続的な音を作り出す電子楽器です。
* ファジィコントローラ: 家電製品などに組み込まれ、人間の感覚に近いあいまいな情報(ファジィ情報)を処理して、連続的な制御を行うシステムです。デジタルコンピュータとのハイブリッドな形で用いられることが多いです。
* ニューロコンピュータ: 研究段階にある分野ですが、脳の神経回路網を模倣したコンピュータであり、アナログ的な計算要素を含むことがあります。

アナログコンピュータは、その性質上、特定の物理現象のシミュレーションや微分方程式の解法など、連続的な物理量を扱う問題に強みを持っていました。デジタルコンピュータの発展により、汎用的な計算の主役はデジタルに移行しましたが、アナログ的なアプローチは今でも特定の分野でその価値を見出されています。